スペインの金融大手BBVAが、OpenAIとの戦略的提携を拡大し、全行的なAI変革を加速させている。全世界の従業員10万人規模でChatGPT Enterpriseを導入し、業務効率化と意思決定の高度化を同時に実現する同社の取り組みは、金融業界における生成AI活用の新たな試金石となる。
BBVAは、経営層による強力な主導と、現場主導の「AIウィザード」ネットワークを組み合わせることで、大規模なAI導入を成功させている。BBVAの発表によれば、2024年5月に3,000ライセンスから開始したChatGPT Enterpriseの展開は、2025年12月には全世界の全従業員12万人規模へと拡大した。導入からわずか5ヶ月後には、ライセンス保有者の83%が週に一度はツールを利用し、約3,000のカスタムGPTが現場で作成されている。従業員は定型業務を自動化することで、週に平均約3時間の作業時間を削減しており、このトップダウンとボトムアップの融合が、保守的な金融機関におけるAI活用の障壁を打ち破る原動力となっている。
BBVAのAI活用は、具体的な数値としてその実効性を示している。同社の技術文書によれば、ペルー拠点では顧客対応時間を約80%削減したと報告されており、生成AIが定型業務の効率化に大きく貢献している。また、法務部門では回答作成の自動化が進み、専門職の判断を補完する強力なツールとして機能している。メキシコでの顧客体験アシスタントや、グローバルリスク管理部門での信用分析など、特定の業務フローに特化した2万個以上のカスタムGPTが現場主導で作成され、多様な業務領域で生産性向上に寄与している。
BBVAは、従来の「金融商品を売る場所」としての銀行から脱却し、「AIを駆使して顧客の未来を予測するプラットフォーム」への転換を目指している。この戦略は、2025年12月に発表されたAI変革ロードマップ「The Eight」に集約されており、顧客とのインタラクション、リスク管理、プロセス自動化、技術的能力の強化を目的とした6つのソリューションと2つの主要な柱で構成される。BBVAのCEOであるOnur Genç氏は、AIがデジタル革命よりも速く、より深い変革をもたらすと強調しており、金融業界全体で生成AIの導入が加速する中で、同社が先駆者としての地位を確立しようとする意図がうかがえる。
BBVAのAI変革は、OpenAIの基盤モデルに強く依存した構造であり、将来的なベンダーロックインのリスクを抱えている。金融という極めて高い信頼性が求められる領域において、特定のテクノロジープロバイダーへの依存が、システム障害やモデルのバイアスによるリスク管理のブラックボックス化を招く懸念は拭えない。また、AIが生成した回答の正確性をいかに担保し続けるかという「信頼の維持」も重要な課題である。Riskonnectのレポートによれば、企業の93%が生成AIのリスクを認識しているものの、管理準備ができているのはわずか9%に過ぎない。BBVAが金融規制当局に対する説明責任をどのように果たし、2万個に及ぶカスタムGPTの品質管理とナレッジ共有を維持していくかが、今後の焦点となる。